「…まだ、彼の事が忘れられないの?」



余計な事を言うつもりはなかった。
しかも、二人の別れの大元となる私が聞くなんて論外だ。
でも、翔くんを彷彿させるような雰囲気に親友としての自分が動き出していた。

すると、咲は再び目を合わせて弱々しく微笑む。



「…あっ、うん。簡単に諦められる恋ならこんなに悩まずに済んだのにね。…ほら、私ってバカみたいに真っ直ぐだから、実は鬱陶しいって思われていたかも」

「そんな事ない。咲はいつも頑張り屋さんだよ」


「……ありがと。早く忘れなきゃいけないって思ってるのに、忘れられないのは執着している証拠なのかな。彼女になってからも片想いだと思い知らされたのに、未だに諦めがつかなくて自分でも呆れてるの」



そう言って、瞳を潤ませながら悲しそうに笑った。

咲は翔くんと別れてから二ヶ月が経とうとしてるけど、なかなか想いが断ち切れずに失恋の痛みと戦っている。