「あっ、えーっと…、えーっと。え…エロいやつだから、さっ…咲には向かないよ。きっと……」



冷や汗びっしょりのまま吃らせている自体怪しいのに、あれこれ思考を巡らせた最善策がコレだ。
一瞬、咲との間に微妙な空気が流れた。



「えっ!理玖くんと二人でエロい映画を観て目を腫らすくらい泣いたの?」

「あ…あっ、うん。あはは。だから、その映画は泣けるんだけど、咲にはお勧め出来ないかなぁ、なんて…。あは…あは…」



もう、バカバカバカ!
苦し紛れの嘘をついて自ら傷口を広げてどうするのよ。



「ふーん、そんな映画あるんだぁ。話題になってないけど、どんな内容なのか気になるかも…」



怪しい返答に首を傾げた咲は、果たして私の話を信じ込んだのだろうか。



読みが甘かった。
突っ込まれても答えられるように、いくつか返答を用意しておけば良かった。

これがもしノグだったら、更に根掘り葉掘り聞かれて大変な目に遭ったかもしれないから、下ネタ話に一切ノらない咲でまだマシだったかもしれない。



しかも、更に最悪なのは何の罪もない理玖の名を挙げてしまった事。


ごめん、理玖…。
道連れにしちゃったよ。
後でお手製のマフィンをあげるから、咲の前で最低な嘘をついてしまった事を許してね。