咲が作ったチョコチップクッキーは、私がバレンタイン用に作った焦げたマフィンとは天地の差。
……ってか、めちゃくちゃ美味しい。

しかも、柔らかさと甘さと塩加減のハーモニーが絶妙だから、この味が好き過ぎて涙が出そう。



きっと、これが普通の女子が作るお菓子。
いや…、パティシエレベル?
まさか市販のクッキーじゃないよね。
さっき手作りだって言ってたもんね。


じゃあ、私が作るのはお菓子じゃなくて。
………毒…かもね。




あぁ…。
私が男だったら咲の彼氏になりたかったよ。
可愛いし、思いやりがあって優しいし、勉強出来るし、料理上手だし。

咲の手作りクッキーの出来具合に、幸せ過ぎて噛み砕く度にバカみたいに自然と笑みがほころんでいく。



「本当に美味しい!延々と食べれるくらい絶妙な甘さと塩加減!プロのパティシエも頭が上がらないレベルだよ」

「ちょっとぉ!それは褒めすぎ。ほら、お代わり沢山あるよ。どうぞ」


「咲のクッキー、マジで最っっっ高!あ…、私も咲にバレンタインあるよ。ちょっと待ってね、いま渡すから」

「うそーっ!嬉しい!」



期待を寄せる咲の返事に地味に胸が締め付けられる。
何故なら、私のマフィンは誰がどう見ても地獄行きだから。