「あ……、そうだ!今日ね、連絡物と谷崎くんの荷物を持ってきたの。終業式だったから中に通知表も入ってる」

「ありがとう」



しっかりと手に持ちつつも、半分存在が忘れかかっていた荷物を思い出して彼に渡した。

彼が部屋に荷物を置いている間、いま自分に何か出来る事はないか思って台所に入る。



人の家だから身勝手な行動は気が引けるけど、炊飯器が視界に飛び込むと中身が入ってる事を期待して蓋を開けた。

すると、炊飯器の中には二合分くらいの白米が残っている。



これで何かを作ってあげられないかな……。



私が母親から温かいご飯を食べさせてもらっているように、彼に出来立ての温かいご飯を食べさせてあげたい。

手の込んだ料理は出来ないけど、おにぎりくらいだったら作れるかも。
ご飯を握った後に塩で味をつければいいんだもんね。

自宅じゃないから冷蔵庫を勝手にあさって具を探し出せないし…。



料理経験がないから腕も自信もないけど、彼に温かいご飯を食べさせたい一心で、無力な自分の心を大きく動かした。