教室に到着すると、先に到着していた咲に「おはよ」と作り笑顔で挨拶してから自分の席に着いた。

すると、咲は背中を追いかけてきて前の席に座ると、15センチ四方のピンクの箱を私の机の上に置いて両手で蓋を開けた。



「じゃじゃーん。お手製の手作りクッキーだよ~!何と今回はチョコチップ入り。今から一緒に食べよー」



咲は、昨日翔くんが私に告白したという事実を知らないまま、純真無垢な笑顔で箱に入った手作りクッキーを私に勧めた。

やっぱり咲の笑顔には勝てないし、私の事情を知らない咲に罪はないから、私は心にしこりを残したままいつも通りの自分を振る舞った。



「うわっ!すっごい山盛り。こんなに沢山作って大変だったんじゃない?もしかして昨日バイト休みだった?」

「じゃなきゃ作る時間がないよ〜。いま店ではチョコフェスやってるから、フェス最終日の今日はバイトなんだ。いっぱい作ったから後で他のクラスの友達にも分けに行くんだけど、まずは愛里紗にと思って」


「やったぁ!親友の特権。いただきィ!」


チョコチップクッキーが30個くらい入ってる箱の中から、3センチ程度の見栄えがいいクッキーをつまみ上げて一口で口の中に入れてリズム良く噛み砕く。