翔くん…。
あれからちゃんと家に帰ったかな。
ケンカを止めた後は身も心も置き去りにしてしまったから後ろ髪を引かれる。



翔くんの事を思い描いた途端、未だに物置に眠っている未開封の手紙を思い出した。
二通目までは読めたけど、心に余裕がなかったせいもあって三通目までは行き届いていない。



玄関に傘を取りに行った後、冷蔵庫のフックにかかっている母のエプロンのポケットから物置の鍵を取り出した。

リビング窓から傘をさして物置へ。
鍵を開けて中に入り、右手前に傘を立てかけた。


スマホのライトで物置内を照らして、左前方のスチール棚の前へ行き、残りの手紙が入っている菓子缶を手に取って蓋を開けた。
手紙をガサッと鷲掴みにして封筒の数を数える。



「……14…15…16枚」



一番新しい消印は三年二ヶ月前。
この手紙を出した頃は咲と出会っていたんだよね。
翔くんはこんなに沢山手紙を送ってくれたのに、受け取れたのは残念ながら本人と再会後。



愛里紗は一番新しい消印以外の封筒は菓子缶の中に置いて、新しい消印の封筒から中の便箋を取り出した。

便箋を開いてからスマホのライトを照らしてみると、びっしり書き詰められていた一通目、二通目の手紙とは違う。
便箋中央に書かれていたのはたったの三文字。

たった三文字だけど、そこには手紙を書いた頃の心境がギュッと凝縮されていた。