自己嫌悪に陥ると、込み上げてくる涙が止まらなくなった。
布団に包まって声を殺しながら泣いても、何の解決にもならないのに。


今日はただでさえ様々な問題に心狂わされて心身共に疲れきっていたのに、それに加えてネックレスの紛失。

身体は更に憔悴(しょうすい)していった。



熱い涙を拭った袖はもうビショビショに。
わんさかと涙が湧き出て来る理由は、ネックレスが無くなった事だけが原因じゃなくて、今日一日我慢していたものが一斉に弾けてしまった事も関係しているのかもしれない。


頭の中には翔くんと理玖の顔が交互に浮かび上がる。
二人の顔が目に焼き付いてしまって、なかなか頭から離れていかない。



そうだ…。
泣いてる暇なんてない。
ネックレスを落とした事を一刻でも早く理玖に伝えて謝らないと。



愛里紗はベッドから両足を下ろして机に置いていたスマホを手に取って画面を開くと、理玖の電話番号をタップしてから耳に当てた。
スピーカーから三コール目の途中で理玖の声が耳に飛び込む。



『…愛里紗?何かあったの?』

「もう家に着いた?」


『あ、うん。いま家に着いたばかり。なんか声が変だけど、どうしたの?』



泣き静まってから一旦気持ちは治ったものの、僅かに鼻をすする音と鼻腔が腫れたような声はスピーカー越しに伝わった。