先日理玖の笑顔が消えてしまった時、私は今まで通りの笑顔を守っていきたいと思っていた。
でも、心がアンバランスだったせいで理玖から笑顔を奪ってしまった。
この罪は深くて重い。
もう一方で、あの場に一人きりで残してきた翔くんの事も心残りだった。
だけど、今の自分にはどうする事も出来ないからもどかしいまま。
恋心に気付いてしまったけど、理玖と別れるつもりはない。
だから、理玖の両手を繋いで顔を見上げた。
「傷付けてごめんなさい…。嫌な思いをしたよね。傷付けたくないって思っているのに、どうしたらいいか分からなくて」
気の利いた言葉が見つからなかったけど、これ以上辛い顔を見たくないから謝った。
すると、理玖は急に両手を引いて少し乱暴気味に唇を近付けた。
「………んっ」
だけど、気付いた時には不意に斜め下を向いて理玖からのキスを拒んでいた。
それはほんの一瞬の出来事だったから、自分でも咄嗟反応に驚いた。