「あんたの頭イカれてんじゃねーの?俺はこの前から愛里紗を大事にしてるって言ってんだろ!」

「俺だって大事にしない日なんて一度もなかった。しかも、別れようと思って別れた訳じゃない。離れてからもずっと愛里紗だけを想ってきた。再会する日をどれだけ心待ちにしてたかお前にはわからないだろ?」



ケンカを止めるのに必死で頭が真っ白になっていたから、状況を把握するのに時間がかかってしまったけど…。
二人の会話を繋ぎ合わせていくと何となく流れが把握出来た。



二人は会った事がある。

だから、必要以上に激しく衝突しているのかもしれない。



「俺らは上手くいってるし毎日幸せを噛み締めてんだよ。この前あれだけ忠告したのに、何でわざわざ幸せを壊しに来るんだよ。俺の気持ちは十分に伝えただろ」

「俺はさっき愛里紗にお前の事が好きかどうかを聞いたけど、『幸せ』としか答えなかった。曖昧な返事をしたって事は気持ちが彷徨っている証拠だろ」


「…それで十分だろ。愛里紗だって、俺との未来に一日一歩ずつ努力してくれてんだよ。いちいち人の恋愛に口出ししてんじゃねーよ」

「お前の事が好きで仕方ないのなら諦めようと思っていたけど、愛里紗を抱きしめた時にそうは思わなかった」


「……っ、なんだとっ…てめぇ!」

「理玖っ、やめて!」



気持ちを逆撫でし合ってる二人の心は計り知れないほどボロボロに。

私の気持ちがぐらぐらと揺らいでいるから、理玖を傷付けてしまっている。
それに、さっき翔くんに曖昧な返事をしてしまったから、翔くんも引き下がらないんだ。