「……もう、何もかも遅いんだよ。どうして今更現れるの…」

「愛里紗…」


「翔くんに会いたかったのは今じゃない。迎えにきちゃダメだよ……」



零れる本心に頬へと滴る大量の涙。
これでも、一線を超えないように最後まで気持ちをロープでくくりつけていた。



辛かった時間は涙と共に消え去ってくれればいいのにね。
そしたら、二人とももっと楽になるかもしれないのに…。



思わず本音が漏れて、心が振り子のようにグラグラしていた、次の瞬間。


シュッ…

ドカッ…



彼の手が身体からするりと解けた後、地面に鈍い音が響き渡った。
すかさかず後ろに振り返ってみると。

そこには……。



「てめぇ!俺の女に何すんだよ。離れろよっ」

「………っく」



突然この場に姿を現した理玖が、地面に倒れ込んでいる翔くんの襟元を掴み上げて、血走った目つきで右拳を振り上げていた。