愛里紗は意識が遠退きそうなほど全身の力が抜けていく。
すると、翔は愛里紗だけに聞こえるくらいの小さな声で優しく囁いた。



「俺はお前じゃなきゃダメなのに、お前以外の女なんて有り得ないだろ」

「えっ……」


「一目惚れから始まったあの日から約六年。お前だけを一途に想ってるし感謝してる。さっきは『幸せ』と答えたら潔く諦めるつもりだった。再会するまで長い歳月が存在してたし、それぞれ違う人生を辿っていたから。

だけど、神社で背中に手を回してくれた時の事を思い出したら気が変わった。やっぱり誰にも渡したくない」



帰宅の足が溢れ返るこの時間帯。
街明かりはスポットライトのように私達二人を照らしている。

呼吸が乱れるほど興奮しているせいか、今は不思議と彼の言葉以外耳に入らない。


恋する衝動を煽るかのように彼の香りを間近に感じた瞬間……。
つま先状態で寸止めしていた恋心は限界を迎えてしまう。