家を出たのは昼食後の13時半。
谷崎くんは一体いつから玄関先にうずくまっていたのだろう。



「谷崎くん、お昼ご飯は食べたの?」

「……まだ食べてない」


「じゃあ、今すぐ食べよう!」



愛里紗は翔の腕を掴んで身体を引っ張り起こした。
勢いに押された翔は、泣き腫らした目をこすり、ジーパンのポケットから自宅の鍵を取り出して扉の鍵を開ける。



「入って。家には誰もいないから」



翔が部屋の扉を開けた瞬間、家の独特な香りが鼻に漂う。



外は日差しが強くて汗ばむほど暑いのに、クーラーが入っていないはずの部屋の中は、何故か少しヒンヤリと感じた。

初めてお邪魔した彼の家は、必要最低限な物しか置いていなくて、とても閑散としている。