だが、愛里紗が翔に言い返してから再び逃げようとしていた。
次の瞬間……。
ガバッ……
「好きだ」
翔は後ろから愛里紗を引き寄せて抱きしめた。
愛里紗の身体はブワッと翔の香りに包まれていき、驚くあまりに大きく目を見開く。
「もう、二度と手離したくない……。神社で引き裂かれるように別れたあの時のように後悔したくないから」
翔は耳元でそう囁いた。
その瞬間、命が吹き込まれてから気持ち良さそうに空高く舞い上がっていたシャボン玉は、再び勢いよく音を立てて弾けた。
身体いっぱいに恋の香りを身にまとった瞬間…。
まるで、自分の在るべき場所がここだと指し示しているかのように。
自分の中の常識を全て覆してしまうかのように。
最後の瞬間まで無理矢理軌道修正をしていた私を、いとも簡単に虜にした。