翔くんに失恋して傷付いてる咲と、私を心から愛してくれている理玖がいる。
私から翔くんに与えられるものなんて、もう一つもない。

だから、話を聞いても受け入れられないし、苦しくなっていくだけ……。



「俺は今も昔も気持ちがブレた日なんてない。中学生の頃に会いに行かなかった事を後悔してる」

「ごめん、私には付き合ってる人がいるから、翔くんの気持ちには応えられない」


「本気でそいつが好きなのか?…じゃあ、神社で偶然に会えた時は何で俺の背中に手を回してきた。何で俺からの手紙を握りしめてた。……あの時はどんな気持ちだったのか本心が知りたい」

「本心…?さっき『幸せ』って答えたじゃん!それが今の私の全てだし答えだから」



口では強がっているけど、残念ながら彼と目を合わすことが出来ない。



ーーでも、この時点ではまだ平常心を保てていた。

その理由は、強気で言い返せる口があったから…。




翔くんの香りを忘れた代償はとっくに払ったのに…。

理玖も咲もいるから、翔くんを忘れなきゃいけないって思っているのに。

これ以上、大事なモノを壊したくないって思っているのに、今になって恋心に気付いてしまうなんて……。



何かおかしいと思い始めた瞬間から何度も軌道修正していたのに、本物の気持ちはちっとも騙されてくれない。