咲……。
もしかして、翔くんが私を忘れてないという事を知ってるの?

もしそうだとしたら、今までどれだけ辛い想いをしてきたの。
誰にも相談出来ずに苦しんでいたんじゃないの。

もし私が咲の立場だったら、とてもじゃないけど耐えられない。



驚愕的な現実にショックを受けた愛里紗は、棒になった足が震えて止まらない。



「じゃあ……、咲の幸せを奪ったのは私だったの?」

「それは、違う。付き合うも別れるも俺達の問題だから」


「ううん、少なくとも私があの日にレストランに現れなければ、二人はまだ付き合っていたはず」

「いつかは結果を出さなきゃいけなかったんだ。俺達はあの時が別れるタイミングだった」


「嘘!私が壊したんだ。親友の私が咲の幸せを壊したんだ……」

「違う!愛里紗のせいじゃない。俺が」
「…ごめん、悪いけど信じられない」



愛里紗は罪悪感に戒められると、翔の手を解いて涙を浮かべながら逃げるように店を後にした。




私は高一の頃から親友なのに、彼女の本当の苦しみが見えていなかった。
両親の離婚の件と、翔くんと別れの原因。

いつも自分の事が精一杯で気付いてあげる事が出来なかった。