私は彼が会いに来てくれる事をずっと待ち望んでいた。


一日に何度も自宅のポストを覗いて彼からの手紙を待ちわびていたり。

別れ際に彼から貰ったイルカのストラップを握り締めながら、神社で暗くなるまで空を眺める日が続いたり。

楽しかった思い出を思い浮かべながら、涙で枕を濡らす恋い焦がれた夜が続いたり。

彼から誕生日にもらった鉛筆で恋日記を書く手が、限界を感じて思うように進まなかったり。



空虚感に襲われていた日々は身も心も不安定で、知らぬ間に周りの人間も巻き添いにしていた。



何も障害がなく素直に彼の胸に飛び込む事が出来たらどんなに幸せか。
私達にどんな未来が待っているのか。

もう少し早く再会していたら、今とは違う未来を辿っていたかもしれないね。




でも、ほんの僅かな幸せを噛み締めていた傍で、遊びがないくらいに急ブレーキを踏み込んでみたら…。

ある言葉に気が止まってしまった。



「いま、ずっと…って言ってたけど。ずっとって、どーゆー意味なの」

「街を出たあの瞬間から今日までずっとだ」


「今日までって事は…。まさか、咲と付き合っていた期間もだよね」

「……そうだ。俺はお前と再会してから自分の気持ちに誤魔化せないと気付いた。別れた理由はそれだけじゃないけど、これ以上咲ちゃんとは付き合えないと思った」






ーーこれが、二人が別れた本当の理由だった。

咲の口からは、『好きになってもらえなかった』としか聞いてなかったけど、間に自分が挟まれているとすると、また話は別に。