まるでタイムスリップしてしまったかのように遡り始めた記憶は、私の心の鍵をこじ開けていく。
彼の掌から温もりが身体浸透した瞬間。
トクン……トクン……
昔告白したあの日に感じていた鼓動が、再び息を吹き返したかのように呼び覚まされていく。
気付かぬふりをしたかった。
私にはもう別の未来が用意されているから、見て見ぬふりをしてやり過ごしたかった。
でも、何度も軌道修正しても心が言うことを聞いてくれない。
残念だけど。
認めたくないけど。
悔しいけど。
私、やっぱり翔くんが好きみたい。
間違いだらけの自分にブレーキを踏んでも、走り出した恋は止まらない。
これは間違いなく恋する鼓動だから。
それまで道が逸れぬようしっかり光を浴びていたはずなのに。
傷付けたくないから、大事にしていこうと心に誓ったばかりなのに。
心の中は全然翔くんを忘れてない。
だから、ずっと怖かった。
気付きたくなかった。
自分の中の常識が全て覆されてしまうから。