翔くんは、つい先日まで咲の彼氏だった。
私達は長年別々の人生を歩んできたせいか、少し心に距離がある。
イタリアンレストランで衝撃的な再会をしてから、顔を合わせるのは今日で三度目。
まさか彼の方から会いに来るとは思わなかった。
何の根拠もないけど、神社で会ったあの日が最後だと思っていたから。
言われるがままについてきてしまったけど、正直いま自分が怖い。
その理由は、彼に会う度に心が不安定になってしまうから。
前回神社で会った時、私達にはそれぞれ別の恋人がいた。
……にもかかわらず、私は我を忘れて彼の背中に腕を回していた。
あの時はびっくりするほど理性を失っていた。
目がなかなか合わせられない今も不安材料が積み重なっている。
また、あの時と同様どうにかなってしまいそうな気がしてならない。
愛里紗はアンバランスな気持ちを一旦落ち着かせるように、僅かに震えた手で持つカフェラテを一口ゴクリと飲んだ。