俺は駅改札の向かい側で、愛里紗の帰りをひたすら待ち続けた。

会える確率の方が低いのに、改札口から放出されるように押し寄せて来る人混みの一人一人に目を向けて探していた。




愛里紗と同じ制服を着た人を見れば目が止まり、容姿が似てる人を見れば勘違いして足が動く。



時計の針は間も無く17時40分。
すっかり辺りは暗くなり、愛里紗が改札から出て来る確率は低くなる一方。

俺はここに居るだけでも、何故か彼女に会えるような気がしてならない。
それは、偶然に偶然を重ねて今日という日を迎えたから。



五年ほど前まで暮らしていた街は、五年近く経ったいまは片想いの彼女が暮らす街に。

俺が暮らしていた当時から比べると、駅は建て替えられていて、古い店は新しい店へと生まれ変わり、懐かしい光景は新しい姿へと変貌を遂げていた。



進み行く時間と、変わりゆく街並みに置いてけぼりにされている俺の考え方は、もしかしたら時代錯誤なのかもしれない。