ーーバレンタインの前日の2月13日。

翔は下校してから電車を乗り継いで愛里紗が暮らす街へ足を向かわせた。


長々と乗車している車内の窓に映る姿は、一向に表情が冴えない。
移り変わる景色は眺めるだけ。
ただ過ぎ行く時間に流されていく。



翔が通っている高校から、愛里紗の暮らす街までは長い道のりになる。
以前、この街に来た時からと比べると、到着時刻は遅くて遭遇率も低い。

偶然でも会えるかどうか分からないのに、翔は神社で愛里紗と再会したあの時のように会えると信じてやまなかった。




二週間前に理玖と対立したばかりだが、再び揺らぎ始めた心に終着点はない。