「………あれ?これ、マフィンだよな。マフィンって、こんなに深い色合いだったっけ?焦げてる?…クンクン…でも、焦げ臭くない」

「だっ…誰がどう見てもお菓子の本の写真と一緒だよ!」


「……マフィンってこんなに香ばしかったっけ?」

「料理上手の理玖のおばさんと同じ同じ。丸っきりおんなじやつ」



マフィンに不審な目を向けた理玖と、焦って失敗を誤魔化す私。
小さなプライドが邪魔をする。



「うーん、日の当たり加減で黒く見えてるのかなぁ。まぁ、いいや。いただきまーす!」



理玖は五口くらいで一個のマフィンをほおばった。



「あっ…うめぇ。……ん?あ……うん。あ……うぅん……?」



マフィンを口にした時の反応はイマイチだったけど、バレンタインを受け取ったあの時はバカみたいに素直に喜んでくれた。