私は翔くんと神社で抱き合ったあの日に心に誓った。

これからは、理玖をもっと大事にしていこうと。


あの日、一日半以上家を空けていた私に『俺は何も聞かないよ』と言って信じて待っててくれたように、私も彼のように大きな器でいてあげたい。

いつも気持ちを受け止めてもらっているから、今度は自分が受け止める番。



だから、私は…。

大判のマフラーを首からスルスルと解いて、心も身体も冷えきっている理玖の首にグルグルと巻きつけた。

でも、それだけじゃ足りないくらい冷えきってるように見えたから、マフラーの両端を掴んで自分側に引っ張って、彼の唇に唇を重ね合わせた。



「……っ!」



私は理玖みたいにキスは上手くない。

でも、そんなのどうだっていい。
不器用だっていい。

これが私からのファーストキス。




いまこの瞬間、生まれて初めて自分の意思で彼に唇を重ねた。
理玖だけしか知らない、私の唇。
たった一人だけ…。


付き合い始めたあの日から、私達は幾度となく唇を重ね合った。
見様見真似で、まだ上手く唇は合わせられないけど。
理玖みたいにいっぱい愛情がこもってないけど。

顔を傾けてゆっくり重ね合わせた。