小雪が舞い散る夜空。
歩いていても震え上がるくらい気温が下がっていて、まるで冷凍庫に閉じ込められてしまったかのように身体の芯まで冷えきっている。
頬を痛めつけるような外気は冷たく、吐く息は白く濁って口から大量に漏れている。
雪が降り重なって足元は悪くなり、塾がある駅前では身を縮こませながら早々と帰宅して行く人の姿を横目で見ていたけど、物音一つしないほど静寂に包まれている公園は当然人影がない。
ベンチの前に立つと、降り積もっている小雪を手で軽くパッパと払い、カバンの中から出したクリアファイルをベンチに敷き、理玖の腕を引いておしりが濡れないようにクリアファイルの上に座らせた。
私は理玖の前にしゃがみ込んで両手をすくい上げて、下から顔を覗き込んだ。
「理玖…。今日は一体どうしたの?何か悩みでもあるの?私で良ければ話を聞くから、遠慮なく話して」
「………」
「……ん?」
首を傾げながら返事を催促しても、彼は視線を落としたまま枯れ果てたような笑みを浮かべてる。
理玖がこんなに塞ぎ込んでる姿を見るのは、知り合ってから初めての事。
どうしたらいいかわからなくて、ただ寄り添う事しか出来ない。