愛里紗は黙って手を引かれつつも、あからさまに様子が違う理玖に心配の目を向けた。
「どうしたの?今日何かあったの?」
隣から顔を覗き込むように見上げるのも、塾を出てからもう五回目。
「……ううん」
彼は目を細めて見下ろすと、首を横に振って無理に微笑む。
塾を出てからすぐに触れ合った冷たい指先は、互いの熱が重なり合ってじんわり温まりつつも、時たま圧が加わったり弱まったり。
まるで今の心境を表すかのように力加減が不安定に。
理玖は隣に私がいる事を忘れてしまったかのように一点を見つめるように見下ろしている。
本当にどうしたのかな。
顔を合わせてからずっと元気がない。
私が聞きたいのは、吐息混じりの返事じゃないよ。
今日だってお日様のような笑顔が見たいって思ってる。
私は心配のあまり心が疼いてしまい、理玖の手を強く握りしめて、普段帰り道で使う道を通らずに脇道に逸れて公園の方へと強引に引っ張り歩いた。