ーー塾の教室内から見る窓の向こう側の景色は、今朝の天気予報どおりフワフワと花びらが舞うように柔らかい小雪がチラついていた。

授業を終えたばかりの私は、荷物を手早くカバンの中に放り込み、寒空の下で帰りを待つ理玖の元へ足早で向かった。





今日もいつも通り。
理玖は吐いた息を曇らせながら出入り口の玄関先で、私の帰りを待っている。

ビルの自動ドアから出ると、彼はニコリと微笑む。
でも、今日はいつもとは違って笑顔が薄い。



「理玖!お待たせ。…雪が降ってきちゃったね。外で待ってたから寒かったでしょ」

「今日はそんなに長く待ってないよ。さぁ、行くか!」



理玖は私が目の前に立つと、花壇からヒョイと腰を上げて私の手を握りしめた。

長く待ってないと言いつつも、赤く染まった頬と鼻先と耳元は嘘をつけない。

冷たく凍りつきそうな手は力強いけど、どこか寂しげに見えた目は隠しきれない。
元気のない姿は一目瞭然だった。



普段なら、私を笑わす為にしきりに冗談を言ってるのに、今日はひとことも喋らないなんて。


どうしたのかな。
何かあったのかな……。