両親が離婚して行方をくらますように母親と街を出た瞬間、狂い出した運命は後戻り出来ない状態に。

本当はもうとっくにお互い別々の道を歩んでいるのに、俺は過去に執着してしまっているばかりに奴の本心まで考えが及ばなかった。



つい最近までは、未来予想図通りに事が進むものだと思っていた。



愛里紗と再会したら、会えなかった約五年分をこの手で幸せにしてあげよう。
もう二度と泣かせないようにしようって思ってた。
二人の思い出は代わりが利かない宝物だったから。



でも、実際は思う様にいかない。



俺が会いに来るのを一人で待ち続けていてくれた彼女。

毎日神社に足を通わせていて、俺が街に戻ってくるのをひたすら願っていた。
過去を引きずって、傷付いて、ようやく立ち直れた頃に新しい恋が始まっていて。

でも、そこには自分の居場所が残されていなかった。



本当は、理玖という男が愛里紗を悲しませている訳じゃなくて、離れている間に俺自身が散々苦しめ続けていたなんて。

奴に真実を聞くくらいなら、いっその事『俺の女に近付くんじゃねーよ』って、一発殴られた方がまだマシだったのかもしれない。