翔は言葉を失った。

街を離れてから透明のままだった時間は、過去が明かされていく度に少しずつ色で塗り重ねられていく。


最初に色を与えてくれたのは、神社のおじいさん。
次に愛里紗の交際相手の理玖。

現実が明らかになっていく度に、透明だったはずの時間はやがてくすんだ闇色に。



話を終えた理玖は、翔から二、三歩離れて背中越しに口を開いた。



「昔からあんたの存在が目障りだった。あんたさえ居なければ…って、何度思った事か。あんたは心の中の時計が過去のまま止まっているかもしれないけど、あんたがいない間にもう何もかもが生まれ変わってんだよ」

「…っ」


「頼むからもう消えてくれよ……。俺達の関係は順調なんだ。これ以上、あいつを苦しめるんじゃねぇよ」



理玖は感情的になりながらそう言うと、煮え切らない態度のまま場を後にした。

一人残された翔は、ショックを受けたまま理玖の後ろ姿を静かに見届ける。