理玖は、翔の言葉一つ一つ思い出してパズルのピースをはめ合わせていくかのように繋ぎ合わさった瞬間、翔が学校を調べてまで会いに来た理由に辿り着いた。

だから、払い除けるかのように鋭い牙を剥く。



「咲ちゃんと何があったのかは知らないけど、別れたからまた愛里紗に近付こうとしてる訳?」

「それは違う。俺は愛里紗を忘れた日なんて一日もない。街を離れてから愛里紗からの連絡を待っていた。それでも連絡が来なかったから、生まれ変わる為に咲ちゃんと付き合った。……でも、やっぱり違うなって思って」


「ホントは愛里紗と再会したから別れたんじゃねぇの?」

「それは違う。愛里紗が現れても現れなくても彼女とは別れていた」


「悪いけど、お前の言い分を素直に受け取れない。俺の前に現れたって事は、愛里紗を奪おうとしている魂胆なんだろ」

「……じゃあ、お前はどうなんだ?他の女に気を持たせるような言い方ばかりして。あいつがお前の不埒な姿を見たら悲しむだろ。泣かせる真似だけは許せない」



理玖は翔の身勝手な見解が癇に障って、翔の胸ぐらを掴み上げて凍りつく目つきで睨みつけた。


「お前……。自分を正当化してんじゃねぇよ。愛里紗を泣かせたり悲しませたのはお前だろ?見えない鎖で愛里紗の心を締めつけていた事に気付いてないの?それとも、気付いてないフリをしてんのかよ」

「……一体、何の話だ」


「俺があんたの事を知らないように、あんたも俺の事を知らないだろ?どんな根拠があって物言いするんだよ」



胸ぐらを掴んでいる震えた指先と、気迫に満ちた瞳。
理玖は現実に目が向かない翔の心に、氷の矢で突き刺すよう冷たく言った。