そうだ!
あれは、塾の問題集を返す為に愛里紗の自宅まで届けに行った時の事。
偶然居合わせた咲ちゃんに質問した事があった。



『ねぇねぇ。咲ちゃんって、いま付き合ってる奴いるの?』

『あっ…あ、うん』


『へーっ。彼氏の名前は?』

『……あっ…い、今井…くんって言うの』




咲ちゃんはあの時確かに今井という名前を口にしていた。

間違いない。
咲ちゃんの彼氏は間違いなく《今井》。
偶然にもこいつと同じ名字。
だから、この名字に引っかかったんだ。


……でも、ありふれた名字とはいえ、咲ちゃんの彼氏と同じ名字なんて珍しいな。




理玖は愛里紗の元彼の名字と咲の彼氏の名字が一致している事に気付くと、一瞬嫌な予感が襲った。



まさか……。
違うよな。
咲ちゃんの彼氏の名字と一致したからといって、同一人物に仕立て上げちゃダメだよな。



でも、もし仮に予想が的中してしまったら、愛里紗は目の前の今井をどう思っていたんだ。
それとも、二人が付き合っている事をまだ知らないとか。


俺はその件について聞く権利がある。
こいつに真意を追求したら、果たして素直に答えてくれるのだろうか。