上空に強い寒気が流れ込み、しっとり冷たく湿った空気は二人の頬を撫でたが、噛み合わない会話によりこの場の空気はより一層冷たく吹き荒れた。



「じゃあ、あんたはクルちゃんじゃないの?俺がクルちゃんって意味不明だけど、さっきうちの学校の生徒に何度もそう呼ばれてたから、俺はあんたがクルちゃんだと思ってたし、さっきはあんた自身も返事をしてただろ?」

「してねぇし。(聞いてたのかよ…。結構地獄耳だな)…って言うか、俺にはクルちゃんは関係ないし」


「じゃあ、そもそもクルちゃんって一体何なんだよ」

「俺が知るかよ」



そう言って小さな争い事を起こした二人は、例の三人組のせいで若干無駄な時間を過ごす事に。
理玖がほんのりと期待していた後者は、どうやら見当違いだったと気付かされた。




後者じゃなければ、前者。
やっぱり、こいつは愛里紗の初恋相手の、あの『谷崎』なのか。

以前、中学校に進学する前に遠い街へ引っ越して行ったと噂で聞いた事があったけど、まさか愛里紗に会う為に姿を現したとか……。


だとしたら、こいつは俺にとって脅威的存在そのもの。
俺は今この瞬間からこいつの事が見過ごせなくなり、確認の意味を込めて聞いた。