「江東、何かあったの?」



翔は友達に囲まれて泣いている愛里紗の姿を見るなり落ち着いた声のトーンで問いかけた。

一方、胸が引き裂かれそうな辛い思いをして泣きじゃくっている愛里紗は、やり場のない悲しみと苦しみで戦っている。



翔はふと目線を落とすと、上履きを履かずに足のつま先を丸めて冷たそうにしている足元に気付く。



「お前の上履き…、なくなったの?」



翔は語尾を失わせるように驚く。
愛里紗は両手で涙をぬぐいながら、素直にコクリと頷いた。
翔の鋭い指摘により周りの友達が反応すると、次々と愛里紗の足元に目線を移した。

愛里紗はみんなから一斉に足元に注目される事すら恥ずかしい。



「まさか…、誰かに上履きを隠されたの?」

「隠されたかどうかはわからない……。だけど、今日学校に来たら私の上履きだけがなくなっていて」



愛里紗は声にならないくらい小さな声で精一杯返事をした。