理玖からの反撃により、場は緊迫感がより一層増した。



理玖は翔の背中を追って歩いていた時から、わざわざ学校まで調べ上げてまで会いにきた翔が、一体どういった人物なのか、自分との関係性や関連性など、あれこれ考えを思い巡らせていた。


ここに来るまでの間、後ろで観察していた限りでは、ハーフ丈のダークグレーのコートから覗かせる制服は黒のズボンで、愛里紗の通う高校の制服とは違う事に気付いていた。

だから、いま目の前にいる人物が愛里紗絡みの人物とはなかなか関連づかない。



翔は理玖に不満気な目を向けたまま口を開く。



「愛里紗は俺の大切な人。だから、さっきのお前の言動が見過ごせなかった」

「はぁ?あんた、何言ってんの?愛里紗はあんたの大切な人以前に、俺の大切な女なんだけど」


「愛里紗が大切なら、何故学校の女子に愛想を振りまいていたんだ」

「え、別に愛想なんて振りまいてないけど」


「女を褒めちぎっていた事を覚えてないのかよ」

「別にいつも通りだけど」



翔には気にかかっていた事が、理玖にとっては普通の事。
上手く噛み合わない会話すら翔にはストレスに感じた。



こいつ…。

散々女を褒めちぎってたクセに淡々とした口調で、いつも通りって何だよ。
普段から愛里紗以外の女を褒めちぎっているのかよ。