真冬の冷たい風を浴びながら冷静な目を向け合う初対面の二人は、それぞれの想いが交錯している。

翔は先程の理玖の言動が脳裏に過ぎると、カッとするあまり階段を下って理玖の胸ぐらを掴み上げた。



「お前、愛里紗を大事にしてないのかよ。愛里紗という女がいるのに、よくもヘラヘラしながら他の女にちょっかい出せるな」



翔は全身まで行き渡らせるような怒声を響かせる。
同じ学校の女子に軽薄な言葉を言ったり、愛里紗にキスを強要した唇一つすら憎く思っている。


一方、翔の不機嫌な理由を察したばかりの理玖は、口から愛里紗の名前が出た瞬間、翔が愛里紗と関わりがある人物と知って驚いたが、すぐさま翔の両手首を掴んで身体から引き離した。