それから二人は、学校から約3分ほど歩いたところにある住宅街内の長階段へ話し合いの場所を移した。



翔は五段先の手すりに手をかけると、表情を変えぬままゆっくり振り返る。
理玖は見上げるように目線を合わせると、互いの姿を瞳に映し合った。



愛里紗の初恋相手で今も忘れる事なく熱い想いを寄せている翔と。

愛里紗の中学生の頃の彼氏であり、現在の彼氏の理玖。



同じ人を好きになった両者は、最大のライバルであり初対面でもある。




翔は心を決めていた。
話し合いの目的はただ一つ。

愛里紗を自分の元へ返してもらおうと思っていた。



最初は愛里紗の気持ちを優先しようと思っていたし、もし相手と幸せに過ごしているなら、そのまま身を引いて諦めようとも思っていたが…。

理玖は愛里紗のいない隙に女子達とじゃれ合ってる姿を見たばかりに、普段から愛里紗を大事にしていないように思えてしまっていた。



今の自分なら愛里紗を幸せに出来る。



翔は、純真で一途に想いを寄せている自分の方が愛里紗に対する気持ちが勝っていると思い込んでいた。