突然赤の他人の翔に強引に連れ去られた理玖は、混乱状態に陥りながらもマフラーで首が締まっていく苦しみから解放する為に翔の手首を掴んで振りほどいた。



「あんた、何なんだよ!いきなり胸ぐらを掴みかかったり、マフラーを引っ張って無理矢理学校から連れ出したり。俺に一体何の用だよ!」

「お前に大事な話があるから来たんだ」



イマイチ状況が飲み込めない理玖は翔に牙を剥いたが、振り返った翔は凍てつく目つきでキッパリとそう言った。



「何だよ、大事な話って。俺はあんたに恨まれる理由が見つかんねぇし」

「お前…。本当に人に恨まれる理由がわからないのか?わからないなら自分の胸に聞いてみろ」


「知るかよ。…ってか、そもそもあんた誰?俺の事知ってんの?…俺はあんたの事を知らないけど」

「いや、俺もまだお前の事をよく知らないけど、最近少し知ったばかりだ」


「は?結局どっちなんだよ…。仕方ねぇな。話を聞いてやるから、もうマフラーを引っ張っんなよ」



不服そうにそう言うが、翔のモノ言いたげな眼差しからある程度の理解を示して一旦我慢をする事に。

そして、無意味な争いを避ける為に、不機嫌に背中を向ける翔の後ろに渋々ついて行った。