しかし、三人組は残念ながら欲求には勝てない。

翔にはもう会えないかもしれないと気付くと、最後にならぬよう校門の3メートル先まで翔達を追い、「クルちゃん、待って」「クルちゃん、行かないで」と交互に何度か声で引き止めたが…。

お冠状態で理玖のマフラーを掴んで引き連れる翔の耳には、当然届くはずもない。



殺風景な現場に居合わせた他の生徒達は、イケメン同士が対決するという異様な事態に興味を示して、あっと言う間に校内に噂が広がった。



二人が現場を去った後、理玖を取り囲んでいた女子五人組は、容姿端麗な翔を思い返すと、胸をときめかせながら噂話に花を咲かせた。



「あの人、ひょっとして理玖に殴りかかろうとしてたのかなぁ」

「理玖とトラブったとか?で、理由は何だろうね。女かなぁ。気になる~!」

「私は理玖よりも、あのモデル風のイケメンの方がタイプかも」

「うっそ、私も私も〜!あの人、めっちゃくちゃカッコイイよねぇ!」



翔の話題で盛り上がりを見せる五人組は、みんな好き放題に話を繰り広げていると、先に翔に興味を湧かせていた三人組は、聞き捨てならぬ話に過敏に反応する。