「お前……」



翔は歯をむき出しにしながら理玖の胸ぐらを掴む。

しかし、翔の存在自体を知らない理玖は、あまりにも突然の事態に仰天する。
理玖と行動を共にしていた女子五人組集団も、荒々しい態度で出現した翔に唖然としている。



理玖は人に恨まれるような記憶がない。
だから、挑戦的な態度で接触してきた翔に不服な目を向けた。



「えっ!誰………、お前。いきなり服を掴むんじゃねーよ」



理玖は手繰り寄せられた服から翔の手を乱暴に振り払う。

それにより距離は出来たが、唯一離そうとしない互いの目は冷たく強く睨み合った。



現場は不穏な空気が漂う。
互いに嫌悪感を抱くさまに凍りつきそうなほどの冷たい雰囲気は、周辺にいる人達の口を塞いだ。