翔は理玖という名にすかさず反応すると、振り払う手を止めて背後の集団の方に目を向けた。


10メートルほど先の女子五人組の間に挟まれるように男が一人。
如何にも軽い口調と元気なノリで笑顔を振りまき、女子達と一緒になってワイワイと楽しそうに騒いでいた。


しかも、その集団の中の男に目を凝らしてよく見てみると、中心にいる人物は自分が探している愛里紗の彼氏の理玖の姿が。

我が物顔で女子集団の中に男一人として紛れ込んでいる理玖は、女子達の中心部でお世辞の嵐を吹き荒らしていた。



翔は門で理玖を待ち構えている間に群がる三人組からセクハラを受けて苦痛を味わいつつも、騒つく先の目に飛び込んだ理玖のその姿は、どう見てもハーレム状態。



周りの女子にちやほやされて調子に乗っているように見えた理玖は、仲良く行動を共にする女子達とじゃれ合うかのように次々と軽薄に褒めちぎっていた。



翔はそんな姿が目に映ると、理玖本人かどうか疑うようになり、目をこすってからもう一度食い入るように見入った。