俺は本来の目的を忘れてしまうくらい、三人組の格好の餌食になってしまった。
すると、猛獣三人組以上の騒がしい女子集団が、校舎の向こう側から校門の方へやって来た。
翔はその間にも迷惑をこうむり続けていて、騒がしい声が三人組の声にかき消されていく。
「クルちゃん、制服学ランなのぉ?カッコイイー!」
「わぁ、ウチらの学校に来た記念に制服の第二ボタンちょうだい」
「クルちゃんって、身体から何かいい香りがするぅ。クンクン……イケ臭?」
「やめろ………」
熱狂的に俺に興味を示す三人組とは親しくもないのに、どこの学校の制服かを調べる為にコートをヒラリと裾から捲られたり、遠慮なく顔を近付けて匂いを嗅がれたりしていて、全校生徒が次々と出てくる校門にて堂々とセクハラを受けていた。
誰か……。
見て見ぬ振りはやめてくれ。
素通りするのはやめてくれ。
早く警察を呼んでくれ。
頼む…、助けてくれ。
眉を上げて心を鬼にした翔は、コートを捲り上げるセクハラ三人組の手を、シッシと追い払っていると…。
先ほどの騒々しい集団が校門の方へと近付き、翔の背後から浴びる黄色い声は徐々にボリュームアップして翔の耳にも会話として成立するくらい鮮明に聞き取れるようになった。
「ユカちゃん、今日も笑顔がかわいいねぇ」
「やっだぁ、理玖ったら!いつも褒め上手なんだからぁ」
一瞬、甘ったるいやりとりが耳に飛び込んでくると、聞き覚えのある声と女子が呼ぶ男の名に我が耳を疑った。
…ん、理玖?
理玖って、まさか……。