だから、半信半疑で聞いた。



「クルちゃんって、俺に向かって言ってるの?」



翔は確認の為に自分の方に震えた指をさして、脳みそを貫通させるくらい真っ直ぐに見つめてくる彼女と目を合わせた。



俺は過去にクルちゃんというあだ名で呼ばれた事はない。
だから、彼女が言っていたクルちゃんとは、俺には関係ないなと思って気にも留めなかった。


すると、リーダー格の彼女はようやく反応を示した翔に、作戦成功と言ったご満悦の様子でフンと鼻を高めた。



「クルちゃんは君!その黒髪はパーマをかけているからクルクルしてるんでしょ?その髪型めっちゃイケてるよ!…だから、クルちゃん」

「……は?あのさぁ…。俺、パーマをかけてる訳じゃなくて、単に癖毛なんだけど。しかも、クルちゃんって何でそんなに可愛らしいあだ名をつける訳?」

「クルちゃんが嫌なら、いい加減私達に名前くらい教えてよぉ。もう仲良くなったでしょ」

「クルちゃんってあだ名、超似合ってる。でも、怒っているクルちゃんちょっと怖いよぉ。クルちゃんって、ひょっとしてツンデレなの?」


「くっ……あのなぁ」



最初は校門でよそよそしく謙虚に話しかけてきた彼女達だったが、たった10分程度の短い時間で古い友人のように馴れ馴れしいくなり、ここぞとばかりに詰め寄ってきた。

最初から相手にするんじゃなかったと肩を落として深く後悔する。