キスを要求する理玖の態度が劇的に気に障った翔は怒りに身を震わせると、先ほど握りしめたばかりの拳に圧が更に加わった。



「くっ……」



奴は気は確かなのか……。
こんなに拓けた街中で、恥じらいもなくいつも堂々とキスをねだっているのか。

たとえ彼氏といえども、人が行き交う街中であんなにハードルが高い要求を軽薄な態度でいとも簡単に……。



翔は、理玖のエスカレートした要求に激昂して歯を食いしばりながら遠目から目を光らせていると……。

愛里紗は赤面したまま理玖から身体を仰け反らせて、こんな恥ずかしいやりとりが周りに注目されてないかを目をキョロキョロさせながら確認する。


それにより、愛里紗に自分がこの街に来ている事に気付かれまいと気を張っていた翔は、焦るあまり近くに停車しているトラックを見つけると裏にサッと身を潜めた。

もの凄く俊敏な動作だったが、ストーカーチックな自分に嫌気がさす。



「バッ…バカ!最初から私にチューをおねだりするつもりでその話をしたんでしょ!」



翔は叱られている理玖を見ながら、愛里紗に同意するかのようにウンウンと頷く。