しかし、まだまだ男の魅力の核心に迫りきれていないと思い、理玖の自慢話に嫌気がさしながらも拳に力を入れて我慢する。
テンポ良く楽しそうに喋っている理玖の話は、まだまだ尽きない。
「だろぉ。それとなぁ、それとっ……」
「……まだあるの?次は何?カッパ?…それとも幽霊?それとも小人?」
「おいおい、バカにすんなって!この前、本当に駅前から見たんだってば!」
「あー、はいはい。そーゆー事にしておくよ。理玖の話って本当に面白いね、あはは」
男に呆れ気味の愛里紗が区切り良く話を断ち切ろうとすると、男はムスッと口を尖らせた。
「笑いに感情がこもってない! 」
「はいはい……。こもってる、こもってる」
「嘘つけ!棒読みじゃんか。……あーっ、俺いま傷付いたわぁ。…あっ!チューしてくれたら直るかも」
「えっ……」
「愛里紗っ!俺にチューして。チューゥ」
男は街中の人通りの多いところで急に甘ったるい声を出すと、愛里紗に顔を近付けて唇を突き出し、自慢話の失態をバネにキスのおねだりを始めた。