翔は改札の奥から流れて来る人混みの中の一人一人に目を向けて愛里紗の姿を探していた。

愛里紗が寄り道する可能性もあるが、長時間駅で待つ覚悟をしている。





すると、おおよそ予想していた通りの時間に改札の奥の方から愛里紗の姿が。
翔は父親からプレゼントしてもらったばかりの腕時計に目をやると、現在時刻は16時45分。

日はだいぶ傾いてきていたが、愛里紗と話し合う時間はたっぷりあると胸を撫で下ろす。



人混みに紛れながらも、徐々に改札の方へ向かって来る愛里紗を呼び止めようとして声を発しようとした瞬間、愛里紗は隣にいる誰かに向かって笑っている事に気付いた。



目を凝らしてみると、そこには彼氏と思われる男と二人で仲良く手をつなぎながら歩いてくる。

てっきり愛里紗が一人きりで改札を出て来ると思っていたから、予想外の展開に気持ちがついて来ない。



翔は、いま自分がここに来ている事を知られたら迷惑がかかってしまうと思い、愛里紗に見つからぬようにと柱の裏に身を隠した。