おじいさんの話の後から著しく引き立ってきたのは、先日愛里紗に彼氏がいるのにも拘わらず俺の背中に手を回してきた事。

どうしてあの時昔の手紙を握りしめていたんだろう。
俺が神社に行く事も知らなかったのに。



もし……。
少しでも幸せじゃないのなら。
少しでも俺に気持ちが残っているのなら。
少しでも俺に可能性が残されているのなら。


一刻でも早く愛里紗を返してもらわないと。



諦めたくない。

離れ離れで会えなかった時間の隙間を、二人で力を合わせながら一つ一つ埋めていきたい。




でも、逆に幸せに暮らしていたとしたら…。
今の生活を守りたかったら。
俺が間に入る事によって迷惑をかけてしまったら。


そう考えた瞬間……。
一歩前に踏み出そうとしていた足が引き止められた。




再会する前までの俺は、愛里紗と再会したら過去と同じような関係に戻れるんじゃないかと信じて止まなかった。
また愛里紗の隣で幸せを噛み締める毎日がやってくるんじゃないかって。



…でも、お互い離れているうちに時は進んでいた。



度重なる恋の障害。
そして、諦めきれない気持ちと今更感。

俺はこれから手探りしながら正解を導き出していかなければならない。