翔はボンヤリと遠い目で池の中を覗き込みながら、ひと月前にこの神社で起きた愛里紗との一件を思い浮かべていると…。



「こりゃまた…。谷崎くん、随分久しぶりじゃのぅ」



穏やかで少しかすれた声を背中から浴びた。

びっくりして振り返ると、そこには小学生時代に殆ど毎日お世話になったおじいさんの姿が。
翔は嬉しくなると自然と顔が綻んだ。



「…おじいさん。お久しぶりです」

「随分大人っぽくなったのぅ。でも、あの当時の面影のままじゃ」


「そうかな…。自分じゃ成長した姿に気付かないから」



翔は元気な様子のおじいさんを見て安心したせいか、フッと鼻に抜けるように小さく笑った。