新居に身を移した後、生活が少し落ち着いてから愛里紗と約束していた手紙を送った。


でも、送ったはずの手紙は何故かリアルタイムで届いていなくて、先日愛里紗と再会した時に、『昨日手紙を受け取ったばかりでまだ全部読めてない』と言って、未開封状態を見せてくれた。


『引っ越してから割とすぐに手紙を送ったのに、何で昨日届いたばかりなんだろう』と首を傾げつつも、今まで返事が届かなかった理由がそこで判明した。



でも、次の瞬間……。
愛里紗の瞳から滝のような涙がこぼれ落ちた。



俺は愛里紗の涙を見た時、息が出来なくなるほど苦しくなって、気付いた時には自分の胸に彼女の頭を押し当てていた。



ーーそれは、俺の恋心がまだ生きてると悟った瞬間だった。




でも、彼女は俺を拒む事なく背中に手を回して声を上げて泣いていた。



あの時、愛里紗が抱きついてきた理由は単に俺が懐かしかったから?
それとも、まだ心の何処かで恋心が生きているから?

新しい恋人がいるにも拘わらず、あの時に抱きついてきた心境がまだ不透明だ。