生徒がわんさかと押し寄せている購買部に到着すると、それぞれ選んだパンと牛乳を手にして会計の列に並んだ。
すると、咲の頭上からゆっくりと焼きそばパンが垂れ下がってきた。
「これ…、やるよ」
咲と二人同時に焼きそばパンを持つ手を辿っていくと、そこには木村の姿が。
「えっ!木村くん、これ…」
「ちょっと買い過ぎただけ。……いっぱい食べて栄養つけて、早く怪我を治せよ」
「あっ、ありが……」
……と、咲が素直にパンを受け取りお礼を言ってる最中、木村は顔を真っ赤にしながら逃げるように走り去った。
それがあまりにも一瞬の事だったから、私達は拍子抜けしてポカンと口を開けた。
でも、不器用ながらも咲の身体を気遣う様子があからさまだったから、可笑しく思った。
「どうしよ…。焼きそばパン貰っちゃってもいいのかなぁ」
「いーの、いーの。貰っときな。……あいつ、なかなかやるじゃん」
私と咲は、木村の粋な計らいにお互いクスッと笑い合った。