ーー1月下旬。

今日の天気は昼前から雪に変わった。

しんしんと降る雪が窓に模様を描いていく。
暖房の効いている教室は、外気温との差が生じて窓が結露している。



その窓ガラスに指で相合傘を書いて、いたずら書きをする男子。

好きな子の名前を書かれた他の男子は、焦って周囲を確認して手をワイパーのようにしていたずら書きを消していた。



そんな様子を着席したままクスッと笑いながら横目で見ていると、財布を持った咲が横から現れて声をかけた。



「愛里紗~!今日はお弁当じゃない日だよね。お昼ご飯一緒に買いに行こう!」



咲の顔のアザの跡はすっかり消えて、手足の捻挫は少しずつ回復傾向に。



「うん、行こっか」



私は机の横にかけていたカバンを開いて財布を取り出し、席を立ち上がって廊下へと向かった。



中庭で話し合いをしたあの日以来、私達の関係は右肩上がりに。

翔くんとの思い出は大切なものだったけど、翔くんと過ごした時間よりも倍近い時間を重ねてきた友情も私には大切。



咲と喧嘩して話せなかった時間は、私にとって苦痛な時間。
どんなに笑って過ごしていても、全然幸せじゃなかった。

だから、お互い本音でぶつかり合えた今はとても幸せだと思う。