咲には今日まで色んな話をしてきたけど、初恋の谷崎くんの話は一度もした事がない。
だから、今回を機に大切な思い出を打ち明ける事にした。



「……どんな子、と言われたら大切なものを全力で守る子だったかな。実は大切な人がいたの。いつも傍で支えていないと壊れちゃうくらい繊細な人。彼とは卒業までの三ヶ月間だけ付き合ったんだけど、彼の両親の離婚を機に引越しちゃって……」

「えっ!大好きな彼と離ればなれになっちゃったの?」



「…うん。いつかまた会えるんじゃないかと思って期待してたんだけど会えなくてね。毎日恋しくて、泣いて泣いて……。なかなか思いを断ち切れなかったよ。今でも当時の夢を見たり、時間を忘れてしまうくらい考えてしまうほど。昨日久々にアルバム出して見ていたら、なんか懐かしいなと思って」

「そっかぁ、愛里紗にはそんなに大切な人がいたんだね。…で、その初恋の彼ってアルバムのどの辺に写ってるの?」


「ええっ…とぉ。谷崎くんは……あっ、いたいた。この人」



愛里紗は横から身体を寄せて、指でなぞりながらアルバムの中の彼の写真を探して、見つけたと同時にピタリと止めた。

すると、咲はアルバムの中の彼を見た瞬間、ハッと目を大きく見開く。