目眩がするほど輝かしく恋い焦がれた時間は、関係が引き裂かれた今でも胸の中で静かに時を刻んでいる。



ーーただ、今はどうしたらいいかわからない。



咲ちゃんは愛里紗の親友で。
愛里紗には新しい彼氏がいる。

もどかしい時間ばかりが過ぎていて、ただただ過ぎ行くこの瞬間ですら、愛里紗が愛おしい。





翔は、目の前に父親がいる事を忘れてしまったかのようにボンヤリとテーブルに目線を落とす。

一方の父親は、恋する瞳で途方に暮れている息子の姿を目にすると、想像以上に深い想いを寄せていると察する。



「大切な人にはまだ会えないのか」

「実は最近偶然に会えたんだけど、そこには想像以上に複雑な事情が絡んでいて。今はもう遠い人」


「まだその子の事が忘れられないんだな」

「そうだな。情けないよな…」



翔は肩を落とし、ため息交じりで弱音を吐いた。